バスボートのエンジン始動用バッテリーを考える。

バスボートのエンジン始動用バッテリーに求められるもの!!

バスボートのエンジン始動用バッテリーは、過酷な使用条件下での性能が求められています。

それは2つの性能を発揮することが重要となっています。

1)ある程度放電させる使用方法でも、クランキングさせることが可能な瞬発力。

2)一定の電力を長時間使用しても大丈夫な蓄電力。

上記の2つの性能は、従来の鉛バッテリーを想定すると相反する性能で、鉛バッテリーではその要求に対応することは出来なくなっています。

より鮮やかとなる魚探は、より電力が必要に!!

この魚探の画像は、弊社のリチウムバッテリーEV-12225をバスボートクランキング用としてご使用いただいている方の画像です。

合計6台の魚探をクランキング用リチウムバッテリーから賄っています。

消費電力等をレポート頂きました。これら全てのデーターはこの方の実測値となります。

これらの魚探を全て動かす電力は7.7A程で、これら全ての電源をリチウムバッテリーから拾っています。

鉛バッテリーでは蓄電力と瞬発力を求めるのは酷!!

鉛バッテリーは、蓄電力に特化したディープサイクルバッテリーと、瞬発力に特化したスターターバッテリーと大きく分けたら2種類あります。

逆に言うと、蓄電力と瞬発力を併せ持つ鉛バッテリーは存在しない事を意味します。

スターターバッテリーはクランキング時の大きな電流値に対応するため、表面積を増やすため薄いプレートを持つ構造となっています。

しかし、放電には不向きで、この薄いプレートが放電による酸化に耐える事ができません。

ディープサイクルバッテリーは、厚いプレートを使用しています。深い放電に耐えるべく厚いプレートを使用しています。

しかし、表面積が少なくなってしまうことで瞬発力が低下してしまいます。

このように「二兎追うものは一兎をも得ず」状態となってしまうのです。

リチウムバッテリー使用で「二兎を得る」

これは上記魚探を作動させながらの使用実測値データーとなります。

リチウムバッテリーは新品のバッテリーを使用。鉛バッテリーとドライバッテリーは使用されているものを使用されている思われます。

しかし、エネルギー密度の高いリチウムバッテリーならではの蓄電力と、高い電圧が寄与する始動性の瞬発力が、多くの可能性の生み出しています。

また、リチウムバッテリーはある程度充電電流値で充電する事が可能です。

この75Ahリチウムバッテリーの場合は、下記表にあるようにオルタネータからの30Aほどの電流値でも問題なく充電する事は可能です。

鉛バッテリーの場合は種類にもよりますが、低い電流値での充電が求められます。

蓄電力・瞬発力・軽量等のリチウムバッテリーメリット    管理の必要な充電電圧デメリット

電気を蓄電して使用し、大きな電流値を使用しなければいけないクランキング性能を求めるには、リチウムバッテリーを選択する事は必然となってくるかもしれません。

しかし、リチウムバッテリーには充電電圧の管理が必要となってきます。

このEV-12225リチウムバッテリーは、14.7V以上を感知すると安全装置が働いて、バッテリーの機能を止めてしまいます。

またすべてのクランキング用リチウムバッテリーは、13.5V以下の電圧の場合は充電されません。

オルタネーターの充電電圧を知ることが必要となってきます。

この使用レポート頂きましたO様ありがとうございました。

バスボートのスターターバッテリーを考察

バスボート用に75Ahリチウムバッテリースターターバッテリー(エレキにも使用可能)を発売しました。

発売にあたってバスボート用では車用のバッテリーとは違い、「放電」を考えなければいけません。

それを考えて75Ahというリチウムスターターバッテリーではかなり容量の大きいバッテリーを作成しました。

それを前回ブログにさせて頂きましたが、バスボートユーザーさんから「AGM(ドライバッテリー)との違いを教えて下さい」等のAGMバッテリーとの特性の違いについてのご質問が多数ありました。

容量測定器から読み取れる特性の違いをレポートします。

そこで今回選んだAGMバッテリーは、ボートスターターバッテリーには最適な、放電させるDEEPサイクルの要素を持たせ、またスターターバッテリーとしての要素も併せ持つとされるOPTIMA(オプティマ)バッテリーのブルートップ D1400というバッテリーです。

比較対象として弊社のリチウムバッテリースターターバッテリー EV-12225を用意しました。

コンディション:新品

CCA(EN):975CCA

容量:20時間容率 75Ah/5時間容率 65Ah

サイズ:324×165×238mm

重量:27.1kg

コンディション:新品

容量:75Ah

サイズ:339×175×195

重量:10.6kg

試験内容

両方のバッテリーをCCCV放電・充電容量測量機にかけます。

この測量機にかけると容量も測定できますが、バッテリーの種類における充電・放電の特性もとても鮮明に把握できます。

検査内容

CC定電流充電(10000mA)→CV充電(14.6V)→10000mAで放電(10.8Vまで)→CC充電(10000mA)→CV充電(14.6V)という内容です。

容量について

今回の試験でまず容量に関しては、充電容量でOPTIMA 58248.4mAh(約58.2Ah)、EVOTEC 76425.3mAh(約76.4Ah)で18176.9mAh(約18.2Ah)の違いがありました。

OPTIMAバッテリーの75Ahというのは20時間容率のものです。20時間放電して10.5Vの終止電圧に達したときに取り出せる容量が75Ahということです。この場合放電電流値は3.75Aとなりますが、今回の試験は10Aで取り出しています。約3倍近い容量で放電していることになりますので、75Ahには至らなかったことが分かります。

また、今回の試験は10.8Vで止まっています。この終止電圧までは0.3V足りていません。(直近の0.3Vで約2700mAhの容量を取り出しています。)おそらく、10.5Vまで放電させていたら、58248.4+2700mAhで60.948.4mAh(60.9Ah)ぐらいの容量と想定できます。

充放電の特徴

OPTIMAの場合には14.6Vまで充電し、10000mAの放電電流でいっきに12.4V付近まで電圧が降下します。

これは、ドライバッテリーの最大充電電圧は14.4V/1部屋2.4Vとなります。

満充電で膨れたおなかを一気に開放したようなものになります。

14.6Vの充電電圧はオルタネーターを想定した場合、ありえる充電電圧です。

ドライバッテリーは14.6Vの充電電圧でも大丈夫です。しかしフロート充電器で充電する場合は、2.25〜2.30/セルに下げて充電が必要です。

電圧降下は徐々に減っていきます。終止電圧の10.8Vまでリチウムバッテリーほどの大きな電圧降下は無く放電を終了します。

EVOTECリチウムバッテリーも14.6Vから10000mAの放電電流で約13.0Vまで降下します。

その後12.4Vまでの電圧降下はとても低く、エネルギーを保持しています。

しかし、約12.4V以降は電圧降下大きく10.8Vまで進みます。

OPTIMA BATTERYは14.6Vから10000mAを1時間放電させた場合、電圧12.1Vになり約10000mAhの容量を取り出しています。

EVOTEC BATTERYは14.6Vから10000mAを1時間放電させた場合、電圧13.2Vになり約10000mAhの容量を取り出しています。

上記はエンジンを停止して、10Aの電流値を1時間使用して再びエンジンを使用する事を想定しています。

エンジン始動時には抵抗値が大事になります。

AGMバッテリーは内部抵抗値が低いバッテリーとなり、AGMスターターバッテリーの抵抗値は0.01Ωと言われています。

EVOTECリチウムバッテリーの抵抗値も0.01Ωとなります。(しかしリチウムバッテリーの場合は気温低下5℃以下で内部抵抗が増加します。)

電圧も高く、残容量も多く、抵抗値は一緒の場合は、リチウムバッテリーの方がエンジン始動は容易と言えます。

またCC Rate(定電流充電割合)という値があります。これは定電流で充電される割合の事で、これが高いと早く充電が完了されます。

上記の表でCV充電の時間が長くなるのは、CC Rateの割合が低いことによります。

OPTIMA=CV充電時間 265分

EVOTEC=CV充電時間 6.8分

バッテリー重量容量CC rate
OPTIMA27.1kg58248.4mAh85.3%
EVOTEC10.6kg76425.3mAh99.7%

試験からは分からない違い

●AGMバッテリーは大電流放電にも安定しています。リチウムバッテリーは大抵大きくても2C(容量の2倍)とされていますが、AGMバッテリーは4C(容量の4倍)も可能。大電流を消費する場合でも安定した電源として利用されています。

●低温にも強い。リチウムバッテリーは気温低温より内部抵抗が増加します。

●過充電に強い(リチウムバッテリー比べると)、リチウムバッテリーの場合は過充電保護装置を備えないと対応できません。過充電保護装置が作動した場合は、エンジンが止まる事になります。

上記内容が今回の試験で得た情報による考察です。

参考になれば幸いです。

バスボートにリチウムスターターバッテリーテストを開始!!

トライトンバスボートにスターターリチウムバッテリーを搭載です。以前にもこのバスボートにテストを兼ねてリチウムバッテリーを搭載しています。約4か月が経過しましたが全く問題なく使用している状態です。

しかし、このバスボートの場合は3つの魚探・各種ポンプを使用したとしても12Aほどです。決して使用している電流値は大きくないという事で、使用値も考慮してスターターバッテリーの容量増加とそれに合う基盤を思考錯誤していました。

30Ahの電池のデーターを元にして、50Ahと75Ahのエンジンスターターバッテリー(エレキでも使用可能)を完成させました。

リチウムバッテリーをバスボートに搭載するにあたって、メリットとデメリットを改めて考えてみました。

デメリット1

電圧管理が必要

リチウムスターターバッテリーは13.5V以上14.6V未満となります。その充電電圧を計測するためにインジケーターを装着しています。

このリチウムバッテリーは、過充電・過放電の保護装置は完備しています。

デメリット2

オンボードチャージャーで充電できない

オンボードチャージャーは最大で15V超える電圧がかかるそうです。鉛バッテリーにも決して高い電圧は良くないのですが、サルフェーションを除去する事を考えているのかもしれません。


メリット1

ボートの軽量化

EV-12150(50Ah)リチウムバッテリー 7.4kg

EV-12225(75Ah)リチウムバッテリー 11.3kg

鉛バッテリーとおおよそ13kg〜20kgの軽量化になります。

メリット2

始動性の良さ

リチウムバッテリーの特徴の高い電圧がなせる技です。

後、バスボートに使用されるスターターバッテリーはディープサイクルバッテリーを使用される方が多いようです。

ディープサイクルバッテリーは鉛スターターバッテリーと比べても始動性はかなり落ちます。

リチウムバッテリーと比べたら雲泥の差がでてしまいます。


このグラフと表はSE12225リチウムバッテリーの容量と電圧変異を測定したものです。

約10000mAh(10Ah)を連続してバッテリーから取り出す実験です。

青線で囲んだところは、丁度バッテリー容量が半分になった時です。満充電から開始して224分(おおよそ4時間)となります。

また、電圧が大きく落ち込みエンジン始動に支障がでてきそうな赤線で囲んだところは、バッテリーの容量が残20%になったところです。

開始から359分(おおよそ6時間)となります。

これは、魚探3台ほどとライブウェルポンプ等を数台同時に動かしているこのボートの電流値が12Aだったことから、この電流値を使用し続けてもおおよそ同じ時間を使用でき、なおかつエンジン始動が出来ると想定できます。

通常は、エンジンを始動すればバッテリーに充電されます。今回の想定はオルタネーターからの充電電圧を想定せずに検証しています。

今回のSE-12225(75Ah)は多くの魚探もしくは高い電流値を使用する装備品を長い時間動かし、エンジン始動に支障がないように制作したものです。

SE-12150(50Ah)それほど使用電流値が多くないバスボートを想定しています。